保険選びに際して、重視するのはどのような点でしょうか。
保険の加入から契約変更のサポート、支払いまで、長い期間接する『保険会社』選びに頭を悩ませる方が多いかもしれません。
自分に合った保険商品、保険会社を選ぶためにも、保険会社の仕組みを知りましょう。
この記事では、日本国内にある保険会社の仕組みや、各社の特徴をお伝えします。
目次
保険会社とは
『保険業』を営む会社は、『保険会社』に分類されます。
まずは、保険業とはどのような業種なのか、そして保険会社の特徴や、どのような種類の会社があるのか、順番に確認していきましょう。
保険業とは
保険加入者から保険料を徴収し、保険事故が発生した際、保険金を所定の受取人に支払うのが、保険業です。
不特定多数の人に対して長期的なサービスを行う性質上、内閣総理大臣の免許が必要とされています。
保険会社の支払い能力を長期にわたって確実に担保する必要性があるからです。
免許は、生命保険業免許と損害保険業免許の2種類あります。
保険業に携わる会社は、『保険業法』に則って事業を行うことが求められています。
事業による分類:生命保険会社と損害保険会社
保険会社は、その事業によって『生命保険会社』と『損害保険会社』に大別できます。
それぞれの特徴を説明する前に、保険会社が扱う3つの保険ビジネスについて解説します。
【第一分野】
人の生死に関して保険金を支払う保険。
定額給付(あらかじめ決められた一定の金額を給付する)。
- 終身保険
- 定期保険
- 個人年金保険
- 定額保険
- 養老保険
- 生存保険
- 学資保険 など
【第二分野】
急激かつ偶発な外来の事故によってもたらされる損害をてん補する保険。
実損てん補(実際に生じた損害を補償)。
- 火災保険
- 地震保険
- 自動車保険
- 海上保険
- 海外旅行傷害保険
- ゴルファー保険 など
【第三分野】
第一分野と第二分野の中間に位置する保険。偶発的な身体リスクに備える。
定額給付・実損てん補、両要素が混在。
- 医療保険
- がん保険
- 傷害保険
- 所得補償保険
- 介護保険 など
生命保険会社が扱うのは、上記のうち第一分野と第三分野です。
一方、損害保険会社が扱うのは、第二分野と第三分野です。
保険業法により、生命保険事業と損害保険事業を兼営すること、つまり第一分野と第二分野を同時に扱うことは認められていません。
2017年現在、日本で生命保険業を営む会社は海外企業を含め41社(金融庁 生命保険会社免許一覧より)、損害保険業を営む会社は52社(金融庁 損害保険会社免許一覧より)あります。
会社形態による分類:相互会社と株式会社
保険業を営む会社は、株式会社または相互会社に限られます。
合名会社、合資会社、合同会社などの持分会社は、保険業を行うことはできないと前述の保険業法に定められているのです。
『相互会社』は保険業特有の経営形態ですから、聞きなれない言葉かもしれません。
相互会社とは、契約者一人ひとりが会社の構成員、つまり『社員』となる経営形態です。
出資者が株主となる株式会社では、会社の意思決定を株主総会で行います。
しかし、相互会社には株主がいませんから、契約者の代表である『総代』が集まる『総代会』を開催し、意思決定が行われます。
また、株式会社の場合、株を発行して資金を調達し、余剰金が出た場合は株主へも分配しなければなりません。
一方、相互会社では、社員、つまり契約者に還元すればよいので、契約者にとって合理的な形態だと言えるのです。
しかし、資金調達の面で問題があり、多くの相互会社が株式会社化を行いました。
現在、相互会社として営業する生命保険会社は以下の5社のみです。
【相互会社の例】
- 日本生命保険相互会社
- 住友生命保険相互会社
- 明治安田生命保険相互会社
- 富国生命保険相互会社
- 朝日生命保険相互会社
【株式会社の例】
- 株式会社かんぽ生命保険
- ソニー生命保険株式会社
- 大同生命保険株式会社
- ライフネット生命保険株式会社 など
保険会社の仕組み
保険会社は、保険契約の加入者を募集し、契約者から集めた保険料を運用、そして保険事故が起こった特定の人に給付を行うことが主な業務です。
保険会社が長期にわたって多数の契約者に保険金を給付できる仕組み、広く多数の人に保険加入を推進できる仕組みは、以下のように成り立っています。
保険会社はどのように利益を出すのか?
収支相等の原則があるとは言え、会社の存続のためには一定の利益がなければいけません。
※『収支相等の原則』とは・・・・・・全契約者が支払う保険料の合計値と、保険会社が給付する保険金の総額が等しくなること
どのようにして利益を出しているのでしょうか。
保険会社の利益には、『死差益』、『利差益』、『費差益』という3つがあります。
【死差益】
死差益とは、予想したよりも亡くなる人が少なく、徴収した保険料よりも支払う保険金が少なかった場合に生じる利益です。
保険会社は、実際の死亡率に忠実に基づいて保険料額を決定するのではなく、一定の『安全率』を考慮して設定しています。
安全率の計算方法は、保険会社によって異なり、安全率が大きいほど多くの死差益が発生している可能性が高いといえます。
【利差益】
利差益とは、預かった保険料を運用し、予想よりも多くの運用益が発生した場合の利益です。
保険契約は基本的に長期にわたるものですから、預かった保険料を財源に保険会社は運用を行います。
【費差益】
費差益は、会社の運営にかかる費用を予想よりも抑えることができた場合に発生する利益です。
生命保険会社の販売チャネルとは?
生命保険会社が商品を売り、契約者を獲得する手段は、いくつかあります。
それぞれの販売チャネルのメリットとデメリットを確認しましょう。
【対面販売(訪問販売)】
対面販売は、営業社員や保険の外交員(生保レディ)が直接顧客に販売するといった経路です。
募集は、自宅や職場で行われることが多いです。
メリット:
営業社員が一人一人の契約者と直接対話することで、世帯構成やライフスタイル、収入、資産状況に合わせたきめ細やかな提案が実現できる
デメリット:
人件費がかかる分、保険料の高い商品が多い
【直接販売(直販)】
直接販売は、保険会社のインターネットサイトなどを通じて契約する方法です。
メリット:
直接人が説明を行うわけではないので、極力シンプルで、わかりやすい商品が多い
デメリット:
保険料が安い、商品ラインアップは限られている
【保険代理店や保険ショップ】
保険会社に代わって、保険代理店の営業社員やショッピングモールなどに店舗を持つ保険ショップの販売員が保険を販売する手法です。
1社の商品しか扱わない『専属代理店』と、複数の保険会社の商品を扱う『乗り合い代理店』があります。
メリット:
ニーズに合わせた提案をしてもらえる、複数の保険会社の商品を同時に比較することができる(乗り合い代理店の場合)
デメリット:
代理店の販売手数料が上乗せされる分、保険料は直販に比べて高い
【銀行の窓口(窓販)】
銀行や信用金庫などの金融機関の窓口で生命保険に加入することも可能です。
2007年に銀行窓販が全面解禁されました。
メリット:
保険だけでなく、その他の金融商品と比較しながら幅広く相談に乗ってもらえる
デメリット:
銀行員は保険のプロではないため、知識が不足していたり、説明不足が起きたりするおそれも
なお、『平成27年度生命保険に関する全国実態調査』によると、直近加入契約の加入チャネルのうち最も多いのは、保険会社の営業社員経由での契約です(59.4%)。
次いで多いのが保険代理店の窓口(保険ショップ含む)や営業社員で、13.7%となっています。
このように、現在も対面販売が圧倒的に多いですが、近年は減少傾向にあり、代理店による販売や銀行の窓口販売が徐々にその割合を高めています。
国内の保険会社
国内の生命保険会社のうち日本企業は38社ありますが、各社販売経路や主力商品などに傾向があります。
国内生命保険会社を3つに分類し、それぞれの特徴を解説します。
国内の生命保険会社は、
- 古くから生命保険業界をリードしてきた会社
- 保険業界以外の資本を持つ会社・損保系子会社
- ネット系生保会社
などに大きく分類できます。
古くから生命保険業界をリードしてきた会社の特徴と該当例
古くから生命保険業界をリードしてきた生命保険会社は、主に対面販売(訪問販売)を採用しています。
販売に力を注いでいる商品は、大型の死亡保障など、パッケージ型の商品で、保険期間が長いものが多いです。
これらの会社の長所は、手厚いサービスです。
数万人規模のプランナーが全国各地に存在するため、どこにお住まいでも訪問による契約内容の確認や、契約変更・請求手続きのサポートを行ってもらえます。
一方短所は、こうした人件費などの経費が必要となるため、保険料が高いという点が挙げられます。
- 日本生命保険相互会社
- 株式会社かんぽ生命保険
- 明治安田生命保険相互会社
- 住友生命保険相互会社
- 第一生命保険株式会社 など
保険業界以外の資本を持つ会社・損保系子会社の特徴と該当例
保険業界以外の資本を持つ会社と損保系子会社は、主に保険代理店や保険ショップが保険会社に代わって販売する方法をとっています。
前述したように、乗り合い代理店も多く、複数の保険会社の保険商品の中から、より合理的な選択を行うことができます。
しかし、保険に関する知識がある程度ない方には取捨選択が難しいため、自分で必要な保障を見極めなければなりません。
【保険業界以外の資本を持つ会社】
- ソニー生命保険会社
- オリックス生命保険会社 など
【損保系子会社】
- 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社
- 東京海上日動あんしん生命保険株式会社 など
ネット系生保会社の会社の特徴と該当例
ネット系生保会社の商品に加入する際は、インターネットにて運営を行う代理店、または保険会社に直接、契約の申し込みを行います。
ネット系生保会社の最大の強みは、保険料の安さです。
人件費などの固定費が大きく削減された分、格安の保険料を実現しています。
一方、契約サポートなどのサービスは最小限であるなどのデメリットもあります。
ネット系生保の商品に加入したい場合は、自分で商品についてよく研究し、自分で契約の見直しなどの管理をしなければなりません。
- ライフネット生命保険株式会社
- 楽天生命保険株式会社
- SBI生命保険株式会社
外資系保険会社
次に、外資系保険会社の特徴を見ていきましょう。
外資系の生命保険会社も、前述の②の国内生命保険会社と似た特徴を持ち、保険代理店や保険ショップを介して販売する会社が多いです。
商品は合理性を追求したオーダーメイド型のものが多く、保険料も比較的安い傾向にあります。
日本で営業を行う外資系保険会社は以下のとおり。
()内は母体のある国を示しています。
【海外に本社がある保険会社の日本支社】
- アメリカンファミリー ライフ アシュアランス カンパニー オブ コロンバス(通称:アフラック)(アメリカ)
- カーディフ・アシュアランス・ヴィ(フランス)
- チューリッヒ・ライフ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド(スイス)
【日本法人化している外資系の保険会社】
- アクサ生命保険株式会社(フランス)
- アクサダイレクト生命保険会社(フランス)
- アリアンツ生命保険株式会社(ドイツ)
- エヌエヌ生命保険株式会社(オランダ)
- クレディ・アグリコル生命保険株式会社(フランス)
- ジブラルタ生命保険株式会社(アメリカ)
- プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社(アメリカ)
- プルデンシャル生命保険株式会社(アメリカ)
- マスミューチュアル生命保険株式会社(アメリカ)
- マニュライフ生命保険株式会社(カナダ)
- メットライフ生命保険株式会社(アメリカ)
商品だけでなく、保険会社もよく確認しましょう
保険選びは、もちろんその商品の内容も重要ですが、数十年もの保険期間中、サービスを提供し続けてもらう保険会社も重要です。
2017年現在、生命保険会社は41社ありますが、すべてを比較検討することは難しいので、それぞれの特徴を知り、自分のニーズに合った保険会社を選択しましょう。
また、保険会社を選ぶ指標として、格付けも参考になります。
格付けは、スタンダード&プアーズ社(S&P)や格付け投資情報センター(R&I)などのものが有名です。
保険財務力、保険金支払能力を表すものがあり、AAA、AA、A、BBB、BB、B、CCC、CCといったスコアで表されます。
スコアが高いほど保険会社の倒産のリスクが低く、債務履行能力があると判断できるので、参考にするのもおすすめです。
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