保険には、主契約と特約があり、それぞれを契約者が任意で組み合わせることができます。
近年、保険商品は多様化し続けており、販売される特約の数は非常に多くなっています。
消費者にとって理解するのが大変ですが、正しい知識を持たなければ、必要のない保障に保険料を支払うことにもなりかねません。
今回は、保険の特約について解説します。
この記事を参考に、自分の保険の契約がどのように構成されているのか、あらためて確認してみてくださいね。
目次
保険の特約とは
保険は、主契約と特約の組み合わせで構成されています。
主契約は保険の土台となる部分で、特約は上乗せ保障部分です。
旅行のパッケージツアーで喩えると、飛行機とホテルが主契約、オプショナルツアーが特約に該当するイメージです。
1つの主契約に対し、複数の特約を付加することも可能です。
また、主契約が消滅すれば、特約は自動的に消滅します。
主契約を解約して、特約の保障だけを残すことはできません。
旅行そのものをキャンセルすれば、オプショナルツアーに参加できないのと同じです。
特約の種類
特約にはさまざまな種類があります。
下記は一例で、保険会社によって扱う商品や、商品内容は異なります。
また、主契約によっては付加できない特約もあるので、個別に確認が必要です。
【死亡保障を上乗せする特約】
すでにある死亡保障に、必要保障額が大きい時期のみ特約を上乗せして備えるといった活用方法があります。
医療保険など、生存給付型の保険に死亡保障を付けることもできます。
- 定期特約 : 一定の保障期間中に死亡した場合、死亡保険金が支払われる特約
- 収入保障特約 : 死亡した場合、一時金ではなく年金形式で保険金が支払われる特約
- 三大疾病保障特約 : がん・急性心筋梗塞・脳卒中により死亡、または所定の状態になったとき、保険金が支払われる特約
【不慮の事故による死亡や傷害に備える特約】
不慮の事故はいつ誰にふりかかるかわからないからこそ、保険で備える意義があります。
特約として付加できるのは主に以下の2つです。
- 災害死亡割増特約 : 不慮の事故で死亡、または高度障害状態になった場合、保険金が支払われる
- 傷害特約 : 不慮の事故によるさまざまな傷害状態に対して保険金が支払われる
【入院・手術・通院に備える特約】
入院や通院が必要となったとき、給付金が支払われる特約です。
- 疾病入院特約 : 病気で入院した場合、入院給付金が支払われる特約
- 災害入院特約 : 不慮の事故で入院した場合、入院給付金が支払われる特約
- 手術特約 : 所定の手術を行った場合、手術給付金が支払われる特約
- 通院特約 : 入院前後の通院に対し、通院給付金が支払われる特約
【特定の疾患に備える特約】
特定の疾患での入院に対して給付金が支払われるものです。
指定された病気以外での入院は保障の対象外で、保障対象となる病気の範囲は商品によってさまざまです。
- 成人病(生活習慣病)入院特約 : がん、脳血管疾患、心疾患、高血圧性疾患、糖尿病といったいわゆる成人病(生活習慣病)で入院したとき、入院給付金が支払われる特約(商品によっては肝硬変や腎疾患が対象疾患に含まれることも)
- がん特約 : がんと診断されたときがん診断給付金が、入院したとき入院給付金が支払われる特約(手術給付金や通院給付金を含む商品もある)
- 女性疾病入院特約 : 女性特有の病気(子宮や子宮付属器、乳房の病気など)で入院したときに入院給付金が支払われる特約
【保険料免除特約】
所定の状態になったとき、以後の保険料の支払いが免除となる特約です。
所定の状態は、3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)と診断されたとき、所定の身体障害状態や要介護状態になったときなど、商品によって異なります。
内容を確認の上、付加するか決定しましょう。
万一、病気やケガによって収入が途絶えた場合も保険を諦めることなく継続できる、もしものときに役立つ特約です。
【リビングニーズ特約】
リビングニーズ特約とは、被保険者が余命6ヶ月と診断されたとき、生存中に被保険者本人が死亡保険金の全部または一部を受け取れる特約です(上限は3,000万円)。
死亡保険金は通常、被保険者の死後指定受取人に支払われるものですが、この特約により、本人の残りの人生のために保険金を使うことが可能となります。
この特約には保険料がかかりません。
近年販売されている保険には、ほとんど自動的にリビングニーズ特約が付加されています。
【指定代理請求特約】
指定代理請求特約は、入院・手術などの給付金や、高度傷害保険金など、受取人が被保険者本人になっている契約において効力を発揮します。
本人が、以下のような「特別な事情」によって請求手続きを行えないとき、「指定代理請求人」が本人に代わって請求の手続きを行うことを認めるのが、この特約です。
〈「特別な事情」の例〉
- 傷害または疾病により、保険金等を請求する意思表示ができないとき
例)脳血管障害などにより、判断能力を失い、財産の管理などをおこなうことができないケース - 治療上の都合により、傷病名または余命の告知を受けていないとき
例)がんの宣告を本人に知らせたくないという家族の意向があるケース - その他1または2に準じた状態であるとき
裏を返せば、この特約が付いていない契約の場合、いかなる事情があっても原則受取人本人にしか給付金・保険金を支払えません(指定代理請求特約の必要性については後述します)。
なお、指定代理請求特約も、リビングニーズ特約同様保険料は0円で、近年販売されるほとんどの保険に付加されています。
特約で備えるメリット・デメリット
特約のメリットは、1つの保険契約に保障を集約することができるため、管理が容易である点が挙げられます。
また、主契約として単独の保険に加入するよりも、特約の方が保険料が安い場合が多いので、トータルの保険料を抑えることができるでしょう。
一方、特約だけを継続することができないため、見直しが複雑になる点はデメリットだと言えます。
また、貯蓄型保険に掛け捨ての特約を付加(例:学資保険+医療特約)すれば、満期保険金(または解約返戻金)が払込保険料総額を下回り、返戻率が下がってしまう点にも注意してください。
保険の特約でチェックすべきポイントは
特約の付加を検討する際は、以下の点に気をつけましょう。
また加入後も、定期的に届けられる「契約内容のご確認」書類などで特約内容を確認し、見直しが必要でないか検討しなければなりません。
特約と主契約(単体の保険)を比較
例えば、がん保険とがん特約、三大疾病保障保険と三大疾病保障特約を比較し、それぞれの保険料、保険金支払いの要件などを比較しましょう。
特約は必要最低限の保障しかなく、個別で加入したほうがよいケースもあります。
主契約を解約すると特約のみ継続できないことを念頭に、どちらが自分にとって最適か判断しなければいけません。
保険料は適切か
特約の種類は数多くあり、どれもそれなりに必要性があるため、あれもこれもと付加してしまいがちです。
しかし、当然ながら付加するほどに保険料は上がりますから、取捨選択が必要です。
本当に備えなければならない事態はどのようなときなのか、無理なく支払える保険料額はいくらなのかを考え、バランス良く加入しましょう。
どの部分が特約なのか、更新はいつなのか
主契約で保障される部分、特約で保障される部分それぞれを確認し、理解しておきましょう。
また、保険料の内訳、それぞれの保障期間を把握しておくことも大切です。
定期タイプの特約については、自動で更新されるものもあります。
更新のタイミングを確認しておかなければ、知らぬ間に保険料が上がっているおそれもあります(更新時点の年齢での保険料率となるため)。
リビングニーズ特約や代理請求特約など、保険料がかからない特約はマスト!
先ほど説明したように、リビングニーズ特約と代理請求特約には保険料がかかりません。
近年販売される保険にはほとんど自動的に付加されるのですが、昔の保険にはついていない可能性があります。
保険期間の途中に付加することもできますから、ついていなければ必ず手続きを行いましょう。
保険の特約を確認しないことで起こるおそれのあるトラブル事例
上記であげたチェックすべきポイントを確認しないと、いざというときトラブルになるおそれもあります。
ケース1:ほとんどが掛け捨てだった…
〈前提〉
契約内容 : 定期死亡保険付終身保険
保険金額 : 3,000万円(内訳 : 主契約保障300万円/特約保障2,700万円)
定期特約部分の保障期間 : 10年
〈経緯〉
保険を検討する際、保険料をできる限り抑えたいという要望を伝えたところ、募集人から普通の終身保険ではなく定期死亡保険付終身保険を勧められました。
保険料が割安で、終身保険なので貯蓄性もあり、3,000万円もの死亡保障が付いているので、納得して加入します。
しかし10年後、契約内容を改めて確認してみると、契約当初より保険料が上がっています。
しかも、解約返戻金は今まで支払った保険料よりも明らかに少ないのです。
さらに、65歳以降の死亡保険金は300万円に減ってしまうことがわかりました。
〈契約時確認すべきこと〉
注意すべき、終身保険に定期特約が上乗せされた定期死亡保険付終身保険。
名前が「終身保険」であるために、貯蓄性があり、契約当初の保障が一生涯続くと勘違いされる方が多いのですが、定期特約部分は掛け捨てで、保障期間が限られています。
また、上記のように死亡保障の大部分が定期特約で保障されるといった設計になっていることも多いため、この保険にはトラブルが多く報告されています。
定期特約を検討する際は、保険期間、保障金額を確認し、その部分については掛け捨てであることを認識した上で、納得できれば契約しましょう。
ケース2:誰も給付金・保険金を請求できない!
〈前提〉
契約内容 : 三大疾病保障保険(主契約)
契約者・被保険者・給付金受取人 : Aさん
〈経緯〉
Aさんはある日突然倒れ、脳卒中と診断されました。
病院に運ばれ、一命をとりとめたものの判断能力のない状態となってしまいます。
復職のめども立たないため、「保険に入っていてよかった」と家族は思いました。
しかし、いざ保険会社に連絡し、保険請求を行おうとしたところ、「請求はAさんご本人からお願いします」と案内されました。
受取人がAさんである限り、他の人に保険金を支払うことはできないのだと言います。
Aさん自身が家庭裁判所で成年後見人の選出を行っていれば、成年後見人から請求することは認められますが、突然の発病のためあらかじめ選出を行っていませんでした。
そのため、今回の保険金は、Aさんの判断能力が戻るまでは請求できないということになります(保険会社によっては法定相続人からの請求を認める場合もありますが、手続きは複雑になります)。
〈指定代理請求特約を付加していれば〉
指定代理請求特約を付加していれば、受取人(Aさん)自身が請求できない事情を鑑みて、あらかじめ指定していた「指定代理請求人」から請求することが可能となります。
保険金を受け取った家族は、Aさんの治療費、生活費の補てんなどに保険を役立てることができます。
このように、指定代請求特約は、本当に必要なタイミングできちんと保険を生かすために欠かせない特約だと言えます。
先ほども述べましたが、古い契約には指定代理請求特約が付いていない可能性があります。
必ず特約内容を確認し、付けておくようにしてください。
特約は内容と必要性を検討してから契約を!
保険の特約について解説しました。
特約の種類は多く、なんとなく付加する人も多いのですが、一つ一つ必要性を考えなければいけません。
また、すでになんらかの保険に加入している方においては、自分の契約内容を確認し、どの部分が主契約で、どの部分が特約からの保障となるのか、きちんと把握しておいてください。
長い保険期間のうちに契約内容を忘れてしまうこともありますから、定期的な確認をおすすめします。
トラブルの多い定期死亡保険付終身保険を始め、特約の多様化は消費者にとって煩雑で理解しにくいものになっています。
だからと言って保険会社の営業担当に任せっきりにせず、できる限りの知識をつけ、自分のお金は自分で守ることが大切です。